先生であれば誰しもが「子どもの力を伸ばしたい!!」と思い「そのために有効な手立ては?」と考えるでしょう。
もちろん、多種多様な個性をもった子どもたちを前に、「◯◯をすれば、点数が30点アップ‼︎」みたいな分かりやすい特効薬は存在しません。
ただ、僕たち人間は、目の前の事象に対して「何とかして楽にクリアしてやろう」と画策する生き物ですから、「誰でも簡単に!!」とか「努力不要」、「即効性あり!!」みたいな甘い言葉に敏感に反応してしまう。
「学習」のようなカテゴリであれば、終わりはないのだから、簡単とか即効性は必要ないように思うのですが、やはり、「目の前に迫ったテストで高い点数を取りたい」という欲望は、うまく利用されてしまうのでしょう。
本記事では、そんな“うまい話”ではなく、生涯学習を念頭に置き、「勉強ができるようになる」とか「技能を高める」という目標を達成するために「好奇心を伸ばそうぜ」という内容となります。
しかし、好奇心関連の記事は過去にいくつかまとめていますので、今回はより授業作りに特化した方法論を土台とし、どのような仕組みで好奇心が発揮される可能性があるのかと価値づけていきたいと思います。

「好奇心」といういわゆる非認知能力は、学業達成に対して知能・勤勉さに続く3番目の影響力を持つと言われています(von Stumm et al., 2011)。200件近い先行研究をまとめたメタ分析で、知的好奇心が知能・勤勉性と並ぶ「学業達成の第三の柱」として位置づけられた、心理学分野でよく引用される知見です。
そう考えると、「好奇心を伸ばそう」、「好奇心を失わないように」と先生たちが躍起になる気持ちも頷けます。
ただ、願っていても好奇心は伸びてくれないのは言わずもがな。
学校教育においては、「授業」という手段を使って、子どもたちの好奇心を刺激したいところですよね。
そこで気になるのは、「好奇心ってどうやって刺激するの?」ということ。
詳しくは別記事に書きましたが、ざっくり確認すると「適度な情報のズレ」がキーワードとなります。
いわゆる「喉まで出かかっている(Tip of Tongue)」状態をつくるということ。「あーなんだっけ、答えられそうなんだけど上手く説明できない」みたいな状態。逆に、「全く知らない」ことについて考えなさいと言われると、恐怖や不安が強まり思考・表現が促されません。
ここから学ぶべきことは、「話合い」のような思考・表現を試すような活動には前提として「知識」や「経験」が必要だということ。
さらに、授業づくりに役立つポイントとして「先入観を利用する」なんて方法もあり。
つまり、「えーそれって普通◯◯じゃん」という“決めつけ”をしている状態で、その子の思い込みとは違った事実が提示されたとき「うそっ、なんで?」と好奇心が刺激され、「あー気になる!!解決したい!!」と主体性を帯びるということなのです。

好奇心を刺激する適度なズレを取り入れた教授法
別記事にあるように、一言で「好奇心」と表現しても、その中身は多種多様。

そんな扱いが難しい好奇心を授業という環境においてどのように刺激していったら良いかという話なのですが、ざっくり紹介します。
⓪課題・問題意識を高める
「適度なズレ」を実現するためには、ぽっと出の問題や先生からのトップダウン式の課題ではうまくいかないでしょう。教材選定や単元計画の時点で、教えるべき知識を念頭に置き、どのようなズレが生じるのか見通しをもち、子どもたちの意識を高めていくことが手立てとなります。
①課題・問題を設定する
何事も現在地とゴールが決まらない限り動き出せません。言うまでもなく課題・問題設定は、スタート地点ですから、みんなで決めることが大切。さらに、解決していきたい課題・問題を正しく認識していないとこれから始まる学習にも”好ましくないズレ”が生じてしまうので注意。
②予想 問題の答えの予想する段階
課題・問題を設定したら欠かしてはいけないのは、「自分の考えをもつ」という段階。自分の考えがない状態でどれだけ学習を進めたとしても好奇心は刺激されません。ただ、自分の考えをもつことが難しいという子どももいるでしょう。だからこそ、「みんなで出し合う」という共有が力を発揮します。先生が意見の交通整理をして、3つほどに絞った後、選択制にして選んでもらうと予想のハードルはぐっと下がります。
また、好奇心を刺激する手立てとして、「自分とは違う予想をしている子どもがいる!!」という気づきを提供することも大切。
予想を出し合う時点で3つの予想が出ていれば、「どれが正解なんだろう?」となりますし、解答分布をグラフ化して共有すれば、「こんなに意見が分かれているんだ!」となるでしょう。
要するに多様な予想を共有し、対立構造を示すことで、「解決したい!!」「答えが気になる!!」という好奇心が刺激されるのです。
③討論 教師の強制なく、発言したい子どもに発言させる
各自で仮説を形成したら次は討論です。それぞれの立場から持論を主張し、「解決したい!!」という気持ちを高めます。もちろん、その場で確かな正解は出てこないでしょう。だからこそ、次の工程である実験・検証へ進む流れとなるはずです。
※好奇心とは別の非認知能力として「メタ認知」も勉強には欠かせません。そして、この能力は、自分の予想の妥当性を自分で考え直すときに働きます。討論内で、友達の考えを聞き、「なるほど。確かにそうかもな。」と思って仮説を修正するような姿をねらいたいですね。
④実験・検証 実験・調査による仮説の検証を行い各自の予想の正否を確かめる
いよいよ正解を明らかにするための活動に入ります。大切なことは、正解かどうかではありません。それよりも、間違えることがとても大切。「そうなの!」「予想と違った!」「まさか!」という感情が動く経験が記憶と結びつくのです。
もちろん、教師の解説によって煮詰まった部分の橋渡しをすることも必要でしょう。
このような基本の流れを踏まえ、各教科らしさを付与したり、自分らしさを混ぜ込んで目の前の子どもの実態に合わせた授業づくりが大切になります。
イギリスでは「好奇心は猫をも殺す」と危険視されている背景があるとか。イギリスでは、猫は9回倒さないと死なないと言われるほど強敵と見なされていることから、それよりも好奇心というのはしぶといよという意味。
確かに、日本では好奇心を伸ばそうなんてラフに良いものと考えられていますが、好奇心が予想外の方向に働くことで、「倫理的にどうなの?」と物議を醸すような事態も引き起こされる。
そう考えると、自分にはどのような方向性の好奇心があるのか?を知らないと怖いですし、その方向に全力で進んでよし!!とも言い切れない。
実に悩ましいコンピテンスですね。
参考文献・出典
von Stumm, S., Hell, B., & Chamorro-Premuzic, T. (2011). The Hungry Mind: Intellectual Curiosity Is the Third Pillar of Academic Performance. Perspectives on Psychological Science, 6(6), 574–588.
西川一二・雨宮俊彦「知的好奇心尺度の作成――拡散的好奇心と特殊的好奇心――」教育心理学研究

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