長年教師を続けていると、「教え方は同じなのに、実力がつく子とつかない子の違いって何だろう?」と一度は疑問に思ったことがあるでしょう。
実はこの疑問、教育界だけでなく、スポーツやビジネス界隈においても、議論されているのです。
どうやら、メンターやコーチに教えを乞うても「着実に吸収して伸びていく人」と「実力にならずに伸び悩む人」という格差が出ることは珍しくないらしい。
そんな不思議の糸口となる研究がありますので、本記事ではこの研究をベースに、「伸びる子どもに共通する6つの資質」を話題とします。
もちろん、この6つの資質は、先生から子どもたちに伝授し、子どもが意識を向けることで育てることができる資質なんだとか!!
・日頃から頑張っているように見えるんだけど、なかなか定着してないみたい。
・子どもに実力をつけてほしいんだけど、何をアドバイスしたら良いのか分からない。
・学習をする際に、共通で心がける確かな視点がほしい!!
といった問題意識がありましたら参考になるはずです。
もちろん、ご自身の実力を伸ばしていくヒントともなり得ますので、ぜひぜひ、子どもと共有してくださいね。
コーチャビリティってなんだ?
教師として教壇に立っていれば、「教え方がうまくなりたい!!」と思うことは数限りないでしょう。
そんな意欲的な先生たちの気持ちを察するように、「教え方スキル向上」の本や研修は巷に溢れ返っています。
ただ、「教わり方」については、あまり話題になりません。
これは、余談となりますが、「良い研修会」について調べた研究では、講師の実力もさることながら、それ以上に「聞き手の質」が良い研修会をつくりあげるためには必須」なんて分かっています。
教師は、授業をすることが仕事なので、子どもたちが反応よく前のめりに参加してくれると、非常に気持ちが良いですし、こっち(教師側)の気持ちも盛り上がるってもんです。
だからこそ、自分の授業スキルを向上させると共に、授業の受けて(子ども側)に対しても、「どのように授業を受けると実力が伸びるのか?」という基礎・基本を教え育てることにより、相乗効果を期待できる。
このような受け手の能力を「コーチャビリティ」なんて表現します。
要するに、「教えてもらう力」といえるでしょう。
そんなコーチャビリティについて、スポーツ・ビジネス・教育の3分野にわたる53件の論文を分析し、6つの視点を出してくれた文献レビューが非常に参考になりますので、本記事でざっくりと取り上げます。
「伸びる子」に共通する6つの要素
文献レビューが示すコーチャビリティ6つの視点は、次の通り。
- 情報への注意深さ
- 学習意欲
- 粘り強さ
- フィードバックを求める力
- フィードバックの受容性
- 行動
となっております。
どれも、「確かに必要そうだ…」と思うものばかり。
では、1つずつ詳しく見ていきましょう。
①情報への注意深さ
「情報への注意深さ」を簡単に言い換えると、「聞く力」です。
新クラスのスタート時、「話を聞くこと」にこだわって指導される先生は多いのではないでしょうか。
まさに、基本の「き」とも言えるこの「聞く力」は、伸びる子どもの条件にも当てはまったとか。
研究によれば、注意を向けるべき対象に意識を向ける力は、知識やスキルの習得だけでなく、対人関係にも影響すると確かめられていて、確かに!!と思わざるを得ません。
逆に言えば、どれだけ丁寧に教えても、注意が向いていなければ「情報が入らない」のです。
では、具体的にどのような子どもの姿が「注意深さを発揮している」と言えるのかと考えると、
こんなところでしょうか。
反対に、注意深さが制御できていない姿は、こんな記述で紹介されていました。
・ぼんやりと心がさまよっている
・ 他のことを考えている(注意散漫、興味の欠如)
・ 「分かった」と言いつつ動けない過信(聞かなくても分かると思っている)
・ 先生の話を途中で遮る、聞き流す、勝手な解釈
んー、自分も視線では捉えておきながらも、なあなあな指導をしてきたなぁと反省ばかり。
最後に、学級ではどのような声掛けをしていくと良いのかも参考までに。
・「耳だけじゃなくて、目と心も使って聞いてみよう」
・「先生が話しているとき、鉛筆を置いて目を見てみよう」
・「今聞いた話を頭の中で『一言』でまとめてみよう」
・「友だちに説明できる人は、本当に聞くことができている人だね」
などなど。
ご自身の言葉に変えて使ってみてください。
②学習意欲
そもそも論になってしまいますが、「学習意欲」も有能な学習者には欠かせません。
ただ、見過ごされがちなのは「もっとうまくなりたい」「知りたい」という積極的な気持ちの裏側には、必ず「自分はまだ知らないことがある」という謙虚さが控えていないといけません。
非認知能力でいう、「知的謙遜」ってやつですね。
研究では、この謙虚さこそが学習意欲の核心だと指摘されています。
では、この学習意欲を存分に発揮できている子どもの姿とはと聞かれたら、先生方はたくさんの具体的な姿が思い浮かぶと思いますが、一応…
なんて感じでしょうか。
逆に、意欲がうまく発揮できていない姿と背景を考えると、
・「どうせ分からない」と最初から諦める(否定的な信念、過去の失敗体験による恐怖や不安)
・「もう知ってる」と聞く前から流す(過信、謙虚さの欠如)
・友だちに「やる気ない感じ」を出す(否定的な人間関係、同調圧力)
・取り組みが表面的で深まらない (意欲の低さ、目的意識の欠如)
こんな要因があるかもしれません。
研究会等でよく「自己有用感」なんて話題となりますが、この有用感をつけるには、「できた!!」という経験値が必要不可欠。
「好き」とか「得意」、「自信」というのは、「上手くできた」という成功体験がきっかけとなって自然と意識に定着していくもの。
短期獲得思考で簡単に他者比較できる社会構造に生きる子どもたちが自信を失いがちになるのも、さもありなんの難しい部分ですね。
とはいえ、先生が諦めていたら改善はしていきません。
子どもたちには、このように、伝えたらいかが?
・「『知らない』のは恥ずかしいことじゃなくて『スタート』だよ」
・「『へぇ!』と1つでも思ったら成長だね」
・「間違えた問題こそ、伸びるヒントになるんだ」
・「全部理解することなんてできない。だから学び続けるんだね」
AIの民主化により、「知っているつもり」は増えていくでしょう。
「知的謙遜」できる態度は、これからの学びに必須ですね。—
③粘り強さ
「粘り強さ」も非認知能力が話題となってから必ず取り上げられる資質ですよね。
いわずもがなですが、失敗・批判・困難に直面しても、あきらめずに続ける力のこと。
いわゆる「グリット」と重なる概念で、研究では「批判的なフィードバックを冷静に受け止め、ミスの後も行動を続けられること」が具体的な姿として示されています。
では、小学校場面で粘り強さを発揮している姿はというと…
「これは、勉強ができそうだ」と思わせる力ですよね。
では、発揮されていない姿も紹介します。
・ 少し難しいと「できない」とすぐに諦める(持続性の低さ)
・「教え方が悪い」と言う(責任転嫁、自己防衛)
・間違いを指摘されると怒る・泣くという不適応な感情反応(怒り・恐怖)
・一度失敗すると、もうやらなくなる(挫折からの放棄)
どれもうーんとなりつつ、自分もやらないようにしないとと猛省。
では、どうやって子どもたちに伝えていくべきかですが、
・「『まだ』できないだけだよ」
・「間違えることは、成長の証拠。間違えない人は、挑戦していない人だよ」
・「失敗したら『なぜ?』を考える。それだけで次が変わるよ」
・「怒りたくなったり泣きたくなったりするのは普通。でも、その後どうするかが大事だよ」
最初から全てが上手くいくなんてことありませんからね。
上達すると忘れがちですが、何をするにも最初は「できない」を経験し、乗り越えてきたのです。
結果よりも過程に着目するという視点の変換がとっても大切なのですよね。
④フィードバックを求める力
ここからは、フィードバック3連荘。
まずは、「フィードバックを求める力」です。
読んで字の通り、自分から「教えてください」「合ってますか?」と聞きにいける力のこと。
研究では、フィードバックを求める頻度が高い子ほど、学習意欲と受容性も高いとされています。
では、求める力がつよい子は、どのような姿なのかというと、
先生側からしてみると休み時間とかに「教えてください」と言われたり、授業中に質問されたりすると「おっ!意欲的だな!」と思いますものね。
やはり、そのような態度は、優秀な学習者には必須なのでしょう。
反対に、フィードバックを求める力が弱い子どもの姿とその背景要因は、
・分からなくても手を挙げない(間違いを指摘されることへの恐怖 )
・「なんとなく分かった」で流す(自己防衛、評価への不安)
・友だちにも聞けず、止まってしまう(関係性の問題、自己開示の難しさ)
・先生に近づけない(心理的安全性の低さ )
などが考えられるでしょう。
気楽に聞くことができる関係性って大切なんですね。
では、どのように声をかけていくかですが、
・「『分かりません』と言える人が賢い人だよ」
・「質問するのは、もっとよくなりたいという気持ちの表れだよ」
・「先生や友だちに聞くことも、立派な勉強の仕方だよ」
みたいな言葉が考えられますね。
⑤フィードバックの受容性
フィードバックゾーンの第2第は、「フィードバックの受容性」です。
先生や友だちからのアドバイスを、感情的にならずに受け取り、自分の中に取り込める力といるでしょう。
先ほどから何度も触れてきた「謙虚さ」が受容性の前提条件だと指摘されています。
そんなフィードバック受容性が高い子どもの姿は、こんな感じ。
こうやってできている姿を並べると、なかなか清々しい人物像が浮かび上がりますね。
では、逆パターンもみていきましょう。発揮されていない姿と背景要因は、
・指摘されると「でも!」と言い返す(防衛的反応、自己イメージの保護)
・先生や友達のアドバイスを無視する(受容性の低さ、不信感)
・「自分はできてる」と思い込んでいる(自己効力感の過剰な誇張)
・褒められないと動かない(承認欲求の強さ、内発的動機の低さ)
自信は欲しいのですが、過剰でもダメという絶妙なところ。
これも有名な話ですが、「褒めて伸ばすことは大切だけど、できていないところや努力していない部分を褒めてはいけない。むしろ、『もっとできるはずだよ』と現実を突きつけることも必要」なんですよね。
では、先生側からできるアドバイスも見ていきましょう。
・「『違う』と言われたとき、まず一回だけ『なるほど』と思ってみよう」
・「自分のやり方を変えるのは、負けじゃない。もっと強くなることだよ」
・「すごい人ほど、アドバイスをよく聞いているよ」
素直に受け取ってくれると良いのですが。
⑥行動
いよいよ最後の資質となりました。
実は、「行動」というのは、「フィードバックされたことを実行するかどうか」という力のこと。
やはり、「分かった」で終わりにせず、行動を変えてこその学びですからね。
研究が示す最終アクションで、ここができない子は「理解はしているが変わらない」という状態に陥りがちです。
では、行動できている子どもの具体の姿を見ていきましょう。
人生何事もそうですが、分かっていても行動につなげなければ成果は得られません。
では、成果を得られない子どもの共通点とその背景要因も見ていきましょう。
・「分かった」と言っても毎回同じミスをする(理解と行動の乖離)
・新しいやり方を試さず、慣れた方法に戻る(変化への抵抗、ルーチンへの固執)
・アドバイスを聞いた直後だけ変わる(習慣化されていない、動機が持続しない)
・何度言っても変わらない(実施の意図そのものの欠如)
自分も「分かっているのに手をつけない」なんてことがあるので、注意しないとなと戒めつつ、声かけに進みましょう。
・「知っているだけではまだまだ。やってみて初めて本物だよ」
・「今日習ったことを早速試してみよう」
・「変えるのは最初だけ難しい。一回やってみると、意外と簡単だよ」
・「やってみてうまくいかなくてもいい。やらないよりずっといいんだよ」
ぜひぜひ、反省を行動までもっていきましょう。
最後に
子どもの成長は、「遺伝と環境の相互作用」と言われています。
遺伝について学校では太刀打ちできませんが、環境設定は、学校の得意分野。
担任やクラスが変わると子どもの様子も変わるように、環境が子どもたちに与える影響は計り知れません。
そんな環境を創り上げることは、もちろん教師の仕事です。
そして、その環境づくりの柱となるのは、学級目標であり先生の子どもたちへ対する声掛けから態度でしょう。
ぜひぜひ、本記事で紹介した6つの要素を伸ばすことができるよう心がけた声かけ、授業づくりをしてみてください。

コメント