AIが仕事を奪うなんて言われていますが、フランスの知の巨人、ジャック・アタリさんは、AIが代行するであろう職業として、
グラフィックデザイナー、銀行員、運転手、法学者、通訳者、金融アナリスト、会計士、商人をあげています。
そして、”2050年に存在するであろう職業のうち少なくとも80%は現存していない”なんて予想をしています。
#世界の取扱説明書
このような未来予想を知ると、「将来の夢は?」なんて質問が意味のない社交辞令のように感じられます。
大人が尋ねる将来の夢って、その大人の価値観に左右されますからね。
子どもの将来を予想してあーだこーだ口を出すよりも、どんな未来にたどり着いたとしても絶対に役立つ「考える力」伸ばすようアドバイスしてあげたほうがよさそうです。
これだけ豊かなはずなのに幸福度が思うように上がらない日本で生きていくのであればなおさら。
子どもたちが大人になっても生き生きと日々を過ごすことができるよう願って、「考える力」を伸ばす機会を提供してあげることこそ、今を生きる大人の役割でしょう。
#世界幸福度ランキング51位(2024)
人間の幸福度は、他者と比較できる収入とか地位という観点ではなく、「主体的に生きているぜ!!」という己の気持ちから高まることが分かっていますからね。
#年収による幸福度上昇には限界あり
そのような根拠をもとにすると、「どのようにしたら考える力が育つのか?」という問題が出てくる訳です。
その問題を解決するポイントがこちら。
①興味・関心をもって関わろうとする態度の伸長(好奇心・開放性)
②「考える集団」づくり(環境・仲間づくり)
③「学びを共有する」多様な機会(メタ認知・心理的安全性)
④「できた!成長した!」を実感できる多様な機会(自己有用感)
では、それぞれのポイントについて具体的に見ていきましょう。
①興味・関心をもって関わろうとする姿の育成(好奇心・開放性)
興味・関心をもつことについてポイントを2つ紹介します。
関連性
意義
<関連性>
「楽しく学んでほしい!」というのは、多くの先生が願うことでしょう。
ただ、授業の楽しさというのは、先生だけが頑張っても成立しません。
ある研究で、講演会をテーマに調べたところ、
「講師が気持ちよく話すことができるのは、聞き手の反応による」
ということが分かっています。
どうやら、「先生が楽しく授業するためには、授業を受ける子どもたちが楽しそうにしている必要がある」ということみたい。
とはいえ、「楽しみなさい!!」というだけでは解決しませんよね。
この研究結果の捉え方を変えてみれば、「授業をする自分が楽しむためには、子どもたちが楽しめる授業を提供すればいい」ということになる訳で…
それができたら苦労しないよ…と言いたいところですが、授業づくりの際、どの教科・領域にも関わって役立つのが、
「人間は『自分に関係ある』と感じられることしか興味をもたない。」
という特性。
先生たちでさえ、「自分が授業をする指導案検討」と「どっかの誰かのする授業の検討」では、モチベーションが変わってくるでしょう。
やはり、「あっ、この話題は自分と関係あるぞ!!」と感じてもらわないと、授業に対して積極的になってもらうのは難しいのです。
ということは、教材研究にあたり、「どこで自分の学級の子どもたちは関係性を感じるだろう?」という視点で考えてみる必要がありますよね。
その教材研究が功を奏して子どもたちがいつもより少しだけ乗り気なら、授業をしている自分も、いつも以上に気持ちよく授業できるかもしれません。
<意義>
言うまでもなく、「勉強」や「練習」というのは辛く苦しいもの。
できれば避けて通りたいところですが、辛さや苦しみを避けてばかりいては成長は望めません。
ストレスと聞くと、「嫌なもの」というイメージですが、ストレスなくして成長はありませんからね。
どのような分野でも「嫌だなぁ」とか「やりたくないなぁ」と感じたことを何とか乗り越えたからこそ、その先に待ち構えている達成感という報酬にたどり着けるのです。
#ストレスレベルが大きすぎるととんでもない結果につながるので注意
この「自分に少し負荷をかける」という行為は、小学校でぜひとも子どもたちに提供したい。
しかし、「何のために負荷をかけているのか?」、もっと言えば「何のために勉強をするの?」という永遠のテーマにここで遭遇するでしょう。
もちろん、答えは1つではありませんが、「何のためにやっているんだっけ?」とメタ的に考えられた子どもがいたとしたらそれは大きな成長です。
そして、身近な大人として、考えられる視点は提供してあげる必要があるでしょう。
ただ、公教育が立ちあがった時代と現代では、社会情勢が大きく変わってしまったため、「学校で勉強すると大人になった時に幸せになれるよ!!」とも一概に言えない今日この頃。
#冒険の書
ただ、勉強を提供する側として覚えておきたいことは、
「人間は、意義のある活動にしか取り組めない。」
という特性があるということ。
少し物騒な話ですが、ナチスが強制収容所で強いた拷問の1つに、「一日中、穴を掘らせて埋めさせる」というものがあります。
何が拷問なのかって、「無意味なことに全力で取り組まされる」ということが辛い。
勉強も同じで、「意味があるのかなぁ?」と半信半疑なのにも関わらず、とにかく”やらされる”というのは、拷問に近いのです。
ちなみに、この拷問を生き抜いたヴィクトール・フランクルさんは、「意味のない作業に自ら意味を付加する」ことで乗り切ったとか。
#夜と霧
「よーし、今日も穴を掘って筋トレするぞ!! 解放された後、健康な身体でいたいものね!!」
みたいな感じで「無意味なことに意義を見出す」と、途端に生きる気力さえ湧いてくるのです。
収監されたホリエモンも、日々の退屈なタスクをどのように効率化するかを考え抜いて実践していたとか。
ちょっと発展的な話題となりますが、「ジョブクラフティング」なんて考え方もありますよね。
#ジョブクラフティング
どれほど退屈なタスクでも、その作業の中に違った意味を見出すこと、途端にモチベーションを回復することができるのです。
「意義を伝えましょう」と聞くと、何だか難しい感じがしますが、そこまで負担に感じることはありません。
参考になるのが、ヴァージニア大学の研究。
学生に不人気な統計学の授業のモチベーションを回復したというものがあります。
統計学を勉強するにあたり、「自分が統計学を使ってサービスを提供する場面」について1~2行で文章にまとめてもらっただけで、何の手立ても受けずに統計学の授業をした学生に比べ、文章を書いた学生のモチベーションが大幅に上がり、成績アップにつながった学生もいた。
#LearnBetter
とのこと。
「今から勉強することは、自分の生活のどんな場面で使えるかな?」と考えて、ちょこっと表現してもらうだけでも、随分違うかもしれません。
さらにいくつか実験を紹介します。
例えばこんな実験。
病院の清掃員の方々に対して「あなたたちは、我が病院の環境創造リーダーです!!」的なメッセージを伝えてラベリングすると、その清掃員の仕事満足度が格段にアップした。
これは結構使えます。
昔から個性的な子どもたちに対して、「キャラ付け」することで、その力を学級のために活かしてもらうなんて工夫していましたよね。
「〇〇博士」とか「学級のムードメーカー」みたいな感じ。
さらに、こんな研究もあります。
大学への寄付をお願いするテレアポの方々に対して、「あなた方の仕事によって寄付が集まり、〇〇さんという学生が学業に専念できている」と伝えただけで、やはりテレアポスタッフのモチベーションが改善し、なんと、寄付額までもアップした。
とか。
要するに、「自分のしていることが素晴らしい結果につながっている」という意義によって、モチベーションややりがいアップにつながるということ。
やはり、ぼくたち人間は「自分の人生において価値のある活動をしたい」という欲求があるのです。
だからこそ、「勉強をしなさい!!」という指図一辺倒ではなく、「勉強をすることは、どんなことに役立つのか?」とか、「どんなメリットがあるのか?」ということを意識的に伝え続けることが大切なのです。
ヒント②の「考える集団」づくりはこちら👇
「考える力」シリーズの第2弾!!
「考える集団」をつくるヒントについて環境調整の側面からサクッとまとめました!!
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