前回の記事では、「メタ認知は、学習においてとっても大切だから、がっつり教える必要があるよ」という内容を書きました。

ピントリッチ曰く、
大学に入学する学生の多くが、メタ認知的知識、つまり様々戦略、様々な認知タスクに関する知識、そして特に自分自身に関する正確な知識をほとんど持たないことに、私たちは驚かされ続けています。(Pintrich,2002)
と嘆いているように、ただ「勉強しなさい‼︎」と言い続けたところで、勉強ができるようにはならないのかもしれません。
とはいえ、つきっきりでフィードバックを与え続けるというのも難しい。
だからこそ、学習者が自分自身の学びを定期的に振り返られるような質問があったら便利でしょう。
そんな質問を、サンフランシスコ州立大学の先生がまとめてくれていたので、それを参考に「子どもたちのメタ認知を促すために使いたい質問」と「先生が授業力を高めるために使えそうな質問」をまとめてみました。
子どもたちに教えてあげるもよし。
自分自身に問いかけることで、授業の質を上げるもよし。
ぜひとも、使ってみてくださいね。
学習する子どものメタ認知を促す質問集
<計画場面>
- この授業の目標は何ですか?
- このトピックについて既に知っていることは何ですか?
- 授業に向けてどのように準備することが最善ですか?
- 授業で学習を進めるにあたり、どこに座り、何をするべきですか?
- 授業で学習を進めるにあたり、何をすべきではないですか?
- もっと知りたいことは何ですか?
<学習場面>
- 先生がこの授業内容を行う目的は何ですか?
- このタスクを達成するために必要なことは何ですか?
- このタスクを達成するためには、どのようなリソースが必要ですか?
- このタスクを達成するためには、どのくらいの時間が必要ですか?
- 前回よりもうまくやるためには、どうしたら良いと思いますか?
- どのような戦略(個人、グループ、テキスト、復など習)で勉強しますか?
- どのくらいの時間をかけて勉強をする予定ですか?
- 1回あたり、どのくらいの時間をかけて勉強をする必要がありますか?
- 現在の理解に基づくと、内容のどの部分に時間をかけるべきですか?また、時間をかける必要がない部分はどこですか?
<学習全般に関わる質問>
- この内容を学ぶことが、なぜ大切なのですか?
- この学習内容は、私のキャリアにおいてどのような関係がありますか?
- この学習で最も学びたい内容は何ですか?
- この学習内容が終わるまでに何ができるようになりたいですか?
<振り返り場面>
- この授業で、どのような気づきがありましたか?
- この授業で、まだ分からないことは何ですか?それを書き留めていますか?
- この授業で、興味深かったことは何ですか?
- この授業内容を自分の生活に関わらせるとしたら、どのようにしますか?
- 重要な内容とそうでない情報を区別できますか?
- 学習をするにあたり、上手くいったこと、上手くいかなかったことは何ですか?
- 目標を達成するために、他にどのようなリソースが必要ですか?また、そのリソースを獲得するために何をする必要がありますか?
- このタスクで、最も難しいことは何ですか?
- このタスクを達成するために修正すべきは何ですか?
<テスト場面>
- 試験のための内容をどの程度体系的に勉強していますか?
- 利用できるサポートをどの程度活用していますか?
- 勉強をするモチベーション維持に苦労していませんか?また、苦労しているなら、この勉強をしている目的を覚えていますか?
- 学習を始めて分かったことは何ですか?また、まだ分からないことは何ですか?そして、どのようにしたら分かるようになりますか?
<学習全般に関して>
- 私は、この学習にどれくらい興味がありますか?
- 自分の学習にどれくらい自信がありますか?
- 自分の興味、関心や自信を高めるために何ができますか?
<評価場面>
- 今日の授業で学んだことは何ですか?
- 今日学んだ内容で、これまでの理解と矛盾している点は何ですか?
- 今日の授業は、以前の授業とどのように関連していましたか?
- 分からないことを解決するために、何をする必要がありますか?
- 今日の授業で最も興味深かったことは何ですか?
<積極性に関する評価質問>
- タスクの目標をどの程度達成できましたか?
- 利用可能なリソースをどの程度利用しましたか?
- うまくいったことで、次回も続けたいことは何ですか?
<テストへの取組に対する評価質問>
- 試験準備で上手くいったことのうち、次回も実践したいことは何ですか?
- あまりうまくいかなかったことのうち、次回に向けて修正したいことは何ですか?
- 正しく回答できなかった問題は何ですか?その理由は?
- まだ分からないことは何ですか?
<取組全体に対する評価質問>
- この学習で5年後も使えると思うことは何ですか?
- この学習で成果を上げたい友人がいたら、どのようなアドバイスをしますか?
先生が使える質問集
<計画全体に対する質問>
- 様々なキャリアを目指す学生にとって、この単元を学ぶことがなぜ重要だと思うのですか?
- この単元を学ぶことで学生のキャリア目標とどのように関係しているのですか?
- これらのつながりを学生にどのように伝えたらよいですか?
- この単元終了までに、学生に何をできるようになってほしいですか?
<授業実践中の質問>
- 学習を促進しているように見える言語や能動的な戦略はどれですか?
- 学習を妨げているように見える言語や能動的な戦略はどれですか?
- 授業のペースは適切ですか?
- 授業を改善するために、今すぐできることは何ですか?
<授業全般に使える質問>
- 私の指導を通して、子どもの目標を効果的に達成するにはどうすれば良いですか?
- この単元での指導方法は、どのような点で子どもの役に立っていますか?または、いませんか?
- 役立っていないことに、どのように対処できますか?
- この単元の指導法が、前回と異なっていますか?また、それはなぜですか?
<授業評価に使える質問>
- 今日の授業はどうでしたか?なぜ、そう思いますか?根拠はありますか?
- 今日の授業アイデアは、以前の授業とどのように関連していましたか?また、子どもはそのつながりをどの程度理解したと思いますか?
- 今日の授業は、次回の授業準備にどのように影響しますか?
<長期視点で使える質問>
- 子どもが、目標を達成したと判断できる根拠は何ですか?
- この単元で最大限学ぶ方法について来年の学生にどのようにアドバイスしますか?
- この単元を教える際、どのように変更しますか?
- これらの変更を行う際に、問題となり得ることは何ですか?
- 教えることに対する自分の考え方は、どのように変更していますか?
学習プロセス別、大切なことまとめ
<事前評価>
新しい学習を始めるにあたり、欠かせないのは、「知っていること」「知らないこと」など、学習の指針となり得る知識を確認することでしょう。
子ども自身が自分の知識に意識的になることで、学習において成長を実感できるはず。
もちろん、トピックに対する子どもの前提知識を確認することは、先生自信の授業プランにも役立ちますよね。
<混乱ポイント>
学習を進める中で、子どもたちが「混乱したポイント」を意識することはとても大切です。
「分からない」という認識は、学習を深めるきっかけを作りますからね。
だからこそ、自分自身に、「何が難しかったか?」「一番混乱したところはどこ?」と問いかけて認識することで、「分からないこと」に対して意識できるようサポートしましょう。
ちなみに、混乱ポイント発見の効果を発揮するためには、「分からないことを受け入れる」ことが必要。
所属する集団の雰囲気や支援者が、「間違えることって素晴らしいよねー。」という価値観を共有しておくことが大切になってくるのです。
また、ピントリッチ曰く、
メタ認知的知識についての議論を教室内での日常的な会話の一部とすることは、生徒が自分自身の認知と学習について話すための言語を育むのに役立つ。(Pintrich,2002)
というように、「分からないことを分からないと言える」という教室の文化は、やはり大切なのです。
<振り返り:回顧的自己評価>
「学習を経て、自分の考え方がどのように変わったのか?」を認識することは非常に大切です。
ただ、そのような機会を提供しなければ、学んだことを認識できないという残念な結末に至ってしまうでしょう。
だからこそ、先生側から、「学習を始める前は、トピックについてどのように考えていたのか?」から「現在、そのトピックについてどように考えているのか?」という質問をすることで、回顧的自己評価によって学習を深めることができます。
- 「この学習を始める前は、○○だと思っていましたが、今は○○だと思います。」という書き方の提示。
- 「トピックについて考え方が変化したことを3つ書きましょう。」という投げかけ。
<反省ジャーナル>
メタ認知を発揮する上で大切なのは、学習を振り返り「何が上手くいって、何が上手くいかなかったか。」と自分に問う機会。
試験後、子どもたちに「次回の試験に向かう自分に対してアドバイスを送る」ことを提案し、アドバイス文を書くというのが反省ジャーナルです。
そのアドバイス文に従ってテストにチャレンジし、テスト後に振り返るという工程を繰り返すことにより、メタ認知習慣を育成することができるでしょう。
テスト後に…
- 「前回のアドバイスを再読し、自分のアドバイスをどれだけ取り入れ られたかを振り返りましょう。」
- 「友達と試験戦略を共有しましょう。」
教師のメタ認知質問集
ここまでは、主に学習者側のメタ認知について見てきましたが、もちろん先生側もメタ認知を発揮して授業を振り返ることで、より効果的な学びを実現することができるでしょう。
以下に、教師のメタ認知に役立つ質問をまとめます。
<授業計画場面で使える質問>
- この授業の目標は何ですか?
- これらの目標にどうやって到達しましたか?
- このトピックについて学生がしっているであろうことは何ですか?
- 自分の考えを裏付ける証拠は何ですか?
- どうすれば、この教材を子どもたちにとって関連性のあるものにできますか?また、なぜ、そう考えるのですか?
- 前回この授業を教えた時に、難しかったことは何ですか?
- どうすれば、難しさをクリアできますか?
<全体計画で使える質問>
- 様々なキャリアを目指す学生にとって、この単元を学ぶことがなぜ重要だと思うのですか?
- この単元を学ぶことで学生のキャリア目標とどのように関係しているのですか?
- これらのつながりを学生にどのように伝えたらよいですか?
- この単元終了までに、学生に何をできるようになってほしいですか?
<支援中に使える質問>
- 学習を促進しているように見える言語や能動的な戦略はどれですか?
- 学習を妨げているように見える言語や能動的な戦略はどれですか?
- 授業のペースは適切ですか?
- 授業を改善するために、今すぐできることは何ですか?
<全体サポートに使える質問>
- 私の指導を通して、子どもの目標を効果的に達成するにはどうすれば良いですか?
- この単元での指導方法は、どのような点で子どもの役に立っていますか?または、いませんか?
- 役立っていないことに、どのように対処できますか?
- この単元の指導法が、前回と異なっていますか?また、それはなぜですか?
<授業評価に使える質問>
- 今日の授業はどうでしたか?なぜ、そう思いますか?根拠はありますか?
- 今日の授業アイデアは、以前の授業とどのように関連していましたか?また、子どもはそのつながりをどの程度理解したと思いますか?
- 今日の授業は、次回の授業準備にどのように影響しますか?
<全体評価に使える質問>
- 子どもが、目標を達成したと判断できる根拠は何ですか?
- この単元で最大限学ぶ方法について来年の学生にどのようにアドバイスしますか?
- この単元を教える際、どのように変更しますか?
- これらの変更を行う際に、問題となり得ることは何ですか?
- 教えることに対する自分の考え方は、どのように変更していますか?
ぜひぜひ、使えそうな質問をピックアップし、定期的に自分自身に問いかけてみてくださいね。
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