なんて会話をしたことがあるのではないでしょうか?
世の中には、パーソナリティをいくつかに分類し、「〇〇タイプ」のようにカテゴライズするサービスに溢れています。
生まれ月とか、星座、血液型など、自分のタイプを探してみたこともあるでしょう。
実は、このような「〇〇タイプ」と診断するような遊びは、古代ギリシア・ローマ時代からあったとか。
古代ギリシアの哲学者、テオプラストスは『人はさまざま』という著作の中で30の性格特性を取り上げているのです。
また、ヒポクラテスによる「四体液説」をもとにガレノスが「四気質説」なんて分類法を作っています。
どうやらぼくたちの先祖たちも、多様な人間をいくつかの分類に分けたがっていた模様。
ただ、多様な人間のパーソナリティが、A、B、O、ABみたいな4つに分けられるの?とちょっと考えてみると、なかなか乱暴な話に思えてきますよね。
しかし、そのような問題に対して果敢に取り組み、科学的に裏付けられた「ビッグ・ファイブ」という分類法が現代にはあるのです。
事の起こりは、アメリカの心理学者、オールポートとオドバートらが、辞書に書いてある人間を形容する言葉を整理したあたりから始まります。
彼らが辞書から抜き出した言葉は、約1万8000語でした。
それらの言葉から、性格を表す言葉に焦点化して整理したところ、なんと4504語もあったとか。
さらにさらに、その約4000語の言葉たちを、おおよそ同じ意味をもつ言葉のまとまりに分けていったのです。
その到達点が、いわゆる「ビッグ・ファイブ」という5つの性格だったのです。
「いやいや…人間の性格を5つで分類することに無理あがるでしょ。」と思いきや、このビッグ・ファイブというのは、代表的な5つの性格をトップにして、そのトップの下に、いくつもの同じような意味の言葉が束になっている複合的な表し方。
さらに、「尺度」という考え方を採用しています。
例えば、人付き合いが得意な「外向性」という性格の反対は、一人で過ごすことが好きな「内向性」と考えられます。
このように対になってはいますが、ほとんどの人が、「友達とわいわい過ごすのもいいけど、たまには一人の時間も欲しいなぁ」なんて考えるでしょう。
ということは、友達付き合いがよくても「外向性100%」という訳ではない。
逆に、一人の時間が最高に幸せと考えていても、「たまには友達と出かけて新しい刺激を取り入れるのもいいかも」と考える人は、「内向性100%」とは言い難い。
このように、ぼくたち人間は100%という極端な性格ではなく、「外向性70%で内向性30%くらい」みたいに、一人の人間の中に両方の性格が混ざっていると考えられるのです。
このように代表的な5つの性格を尺度で捉えることにより、その人のパーソナリティが見えてくるのです。
代表的性格ビッグ・ファイブ
ビッグ・ファイブは、その名の通り、代表的な5つの性格をもとに判断されます。
・外向性
・開放性
・誠実性(勤勉性)
・神経症的傾向
・協調性
これら5つの性格因子を尺度で捉えることにより、「私は、外向性・開放性が高めで、神経症的傾向は低い…」なんて語ることができる。
では、それぞれの性格因子の簡単な特徴を見ていきましょう。
外向性⇔内向性
外向性は、ビッグ・ファイブで表される性格因子の中で最も分かりやすい性格と言われます。
「分かりやすい」というのは、他者から見た判断とビッグ・ファイブの結果が合いやすいということ。
「あの人って、コミュ力高めだよね!!」というあなたのみとりは、結構当たっているかもしれません。
そんな外向性のもつ代表的な特徴がこちら。
・ポジティブで明るい
・活動的で大勢の人が集まる場所を好む
・権力や賞賛、成果を求めがち
・刺激的なイベントが好き
ざっくりまとめると、「快」に結びつく事象に対して積極的にコミットしようとする特徴があります。
外向性が高い人を見抜く簡単な質問として、「海か山か?」と尋ねてみましょう。
こんな単純な質問ですが、外向性が高い人は、海を選ぶ確率が高いと知られています。
一般的には、海という場所は大勢でにぎやかに楽しめますし、周囲に遮るものがない開けた環境でしょう。
外向性が高い人ほど、そのような場所を好むのです。
ちなみに、外向性が高い人の能力を存分に発揮してもらいたいのであれば、窓を閉め切った会議室よりも、周囲が開けたオープンカフェのような場所で話をした方がよいでしょう。
一方で内向性の高い人の特徴は、外向性高めの人がもつ特徴を反対に考えれば見えてきます。
「海?山?」問題では、「山」を選ぶでしょうし、にぎやかなカフェよりも、静かな図書館のような場所の方が居心地よく過ごすことができるでしょう。
さらに、外向性高めの人が、所有物の価値や権威のような目立つものを欲するのに対して、内向性高めの人は、「自分なりの価値観」を存分に発揮することに満足感を得ます。
他者からより良く見られたいというよりは、自分自身を見つめ、自分が満足する暮らしを追求する姿勢が強いのも内向性高めの人の特徴です。
神経症的傾向
「神経症的傾向」と聞くと、なんだかよからぬ雰囲気を感じます。
この傾向が高いということは、簡単に言うと「メンタルが不安定」ということ。
日常生活におけるあらゆる情報の中からネガティブなことに気を取られてしまうでしょう。
そんな特徴が関係して、「主観的幸福度が低くなる」という傾向にあります。
「幸せかどうか?」ということは、長く短い人生を生き抜いていく上で欠かせない視点。
ただ、幸せというのは主観的なものなので、乱暴に言えば「あなたが幸せと感じていれば間違いなく幸せ」なのです。
そんなルールで幸せを考えると、神経症的傾向の高い人は、どうしても主観的幸福度が低めになってしまうでしょう。
もちろん、そんな状況を改善したいと思うのであれば方法はあるのですが、ネガティブに囚われ続け、何の対策もしないままでいくと、健康面での不調にまでつながることもあるので注意です。
将来の幸福度が予測できる!?
ここまで紹介してきた「外向性」と「神経症的傾向」ですが、この2つの性格によって「将来の幸福度を予測することができる」と知られています。
なぜなら、一般的に性格特性というのは、そう簡単に変わることがありません。
ということは、「現在、どのくらい日々の生活に幸せを感じているか?」が「将来、どのくらい幸せか?」に結びつくと予想されるのです。
乱暴にまとめてしまうと、「幸せというのは、周囲の状況がどうこうではなく、その人が、その人が生活する環境に対してどのように関わるか」によって決まるものなのです。
もちろん、科学的にも説明されていて、幸福度について7年から12年の間隔を空けて調べた調査において、「幸福度はそれほど変わらない」という結果となっています。
#幸福の意外な正体
さらに、「別々の家庭環境で育てられた双子を対象にして調べても、幸福度が似通っていた」という結果から、「幸せの感じ方って遺伝するんじゃ?」という話が出てきたのです。
ということは、もともと「幸せだなぁ」と感じやすい人と感じにくい人がいるのでは?ということになり、その感度に関わっているのがどうやら「外向性」と「神経症的傾向」らしいのです。
「幸福度」に影響する2つの性格
では、2つの性格が具体的にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。
まずは、「外向性」から。
先ほども触れましたが、やはり外向性が高いほど社交的であることは間違いありません。
社交的ということは、他者とのコミュニケーション量も増え、コミュ力スキルも上達するでしょう。
すると、必然的に人間関係は広がり、ネットワークも広くなる。
そして、行動範囲も広くなり、新しい経験をする頻度も増え、刺激的な人生となる確率が増えるはず。
このように、多くの仲間と新しい刺激に溢れた人生が幸福度の高さに関連するのです。
もちろん、幅広い人間関係や刺激的な経験は、時にネガティブな結果につながるかもしれません。
新しい出会いを求めるということは、破局につながる確率を上げることでもあり、刺激的な経験は、ケガや死につながる場合があるからです。
海抜5000m級の山頂を目指す登山者を対象にした調査でも、外向性の高さと神経症的傾向の低さが確かめられました。
やはり、命をかけて何かを成し遂げようと言う人に外向性強者が多そうです。
このように、外向的な人は、どんなネガティブでも、他者からの励ましを受けたり、持ち前のポジティブを発揮したりして乗り越えていく。
むしろ、そんなネガティブさえも話のネタとして外向性を高めていくかもしれません。
こう考えると、どのような人生になったとしても外向性高めの人は、幸福度が高くなりそうですよね。
さて、幸福度につながる性格が「外向性」だとしたら、不幸感につながる性格は、「神経症的傾向高め」であることが分かっています。
神経症的傾向は、「ネガティブに対してどの程度反応するか」という指標なので、不幸せにつながってしまうのも仕方ない。
ただ、諦めることはありません。
改善の手立てを取らないままでは変わりませんが、性格というのは、ある程度であればトレーニングで何とかなりますからね。
ただ、神経症的傾向であるが故、秀でた能力があることも分かっています。
外向性高めの人にも捉え方によってはネガティブ要因があったように、神経症的傾向が高い人にも「芸術や政治の世界で、独創性を発揮して活躍できる」というポジティブ要因もあります。
このポジティブさは、現実社会に対する「不満」がモチベーションとなっている場合が多いみたい。
大多数の人がスルーしがちな視点に気付いたり、こだわるポイントが違っていたりと、神経症的傾向が高いからこそ力が発揮できるなんてこともあるのです。
開放性
開放性は、「経験への開放性」なんて言われる性格特性で、ざっくり言うと、
積極的に情報を取り入れようとしている人
と言えるでしょう。
言い換えれば、好奇心に突き動かされている人なんてのは、開放性が高い傾向にある。
逆に、目の前にチャンスがあったとしても、行動しない人は、開放性が低いと言えます。
さらに、開放性が高い人は、創造性が高いことも知られています。
一見関係性のないもの同士を結び付けて、そこに新たな価値を見出してしまう能力の高さも開放性によるのです。
先ほど、幸福度の話題を出しましたが、人間がより良く生きるためには、「好奇心」も必須です。
好奇心が強いことで、積極的に新しいことを取り入れる選択が増え、その選択がチャンスを掴む可能性が高めてくれるからです。
「運は引き寄せるもの」なんて表現されますが、要するにチャンスの回数が増えるほど掴みやすくなるのは当然のことで、開放性が高い人は、とにかく好奇心に突き動かされて何度もチャレンジをするのです。
その度重なるチャレンジの中からヒットが生まれ、周囲からしてみれば「アイツ、もってるよな!!」という評価になる。
さらにチャレンジ過程で、結果につながらなかったとしても確実にスキルアップにはつながるので、できることが増えた結果、自己有用感も高まる。
そして、その自己有用感の高さは次のチャレンジにつながります。
さらに、これまで度重なるチャレンジにおいて身に付けてきたスキルが、意外なところで組み合わさって、思いもよらない結果につながることもある。
このような経緯によって、スキルと自信を高めつつ、権威ものってくるのです。
好奇心の2タイプ
ここまで好奇心の大切さを見てきましたが、好奇心は2つのタイプがあると知られています。
簡単に分類するなら、広く浅い好奇心と、狭く深い好奇心とでもいいましょうか。
とにかく気になったものを調べようとする好奇心を「拡散的好奇心」と言います。
そのように広がっていくのではなく、気になった出来事をとにかく深く追究していくような好奇心を「特殊的好奇心」と言います。
これらの好奇心によしあしはなく、使い方次第で武器になるでしょう。
誠実性(勤勉性)
「誠実性」という字体から既に良さそうな性格であることが伺えますよね。
説明するまでもありませんが、誠実性が高めな人は、
ルールや規則を守り、責任感のある行動を取る
ような人でしょう。
やるべきことを日々こつこつとこなし、一定以上の成果を出す可能性が高くなります。
実は、誠実性が高くなる人は、「セルフコントロールに優れている」という特徴があります。
この世界は、ありとあらゆる誘惑にまみれています。
油断すると高刺激な暇つぶしコンテンツに意識を奪われ、気付いたら「やるべきことが終わっていない!!」とか、「睡眠不足で生産効率ダウン」みたいな結果につながりがち。
しかし、誠実性が高い人たちは、このような誘惑に決して屈しません。
もちろん、誘惑には駆られるのでしょうが、「いやいやいや、今はそんなことをしている場合じゃない!!」と気を取り直し、自分の目標に向かって突き進むことができるのです。
このような性格ですから、さぞかし恩恵を受けそうな気がしますよね。
その予想通りで、誠実性が高い人は、「勉強」に関しても「仕事」でも高い成果を残しやすいことが分かっています。
それだけでなく、友達、恋人、結婚相手のような人間関係においても、不埒な誘惑に打ち勝ち、まさしく誠実な関係性を維持してくれるということも分かっています。
このような事実を知っていれば、パートナー選びは誠実性一択で!!といきたいところですが、現実はそう甘くはありません。
もちろん誠実性の高い人は、人間関係において良好なのでしょうが、時に規律を守らない尖った人に憧れを抱く気持ちをもつ人もいるでしょう。
ちょっとメンタル不安なところを見て「俺が守ってやるぜ!!」と、ついつい不安定な関係に手を出してしまうこともあるじゃないですか。
もちろん、そのような関係が長続きしないとは限りません。
ただ、確率で言うならば、誠実性の高いパートナーを選ぶことをおすすめします。
誠実性のデメリット
完全無欠の最強性格のように思われる「誠実性」ですが、どんなことにでも良しあしはあるもので、極端な誠実性は、ちょっと生きづらくなってしまうかもしれないことが分かっています。
誠実性が高い人は、自分の目標に向かって計画を立て、確実にその計画を実行できるよう行動する人なのですが、世の中は常に自分の思い通りに進むとは限りません。
どれだけ準備をしたとしても、思うような結果につながらない時もあるでしょう。
相手が人間のような予測不可能なものである場合は、綿密な計画が破られてしまうこともあるでしょう。
そんな不測の事態に陥ってしまうと、誠実性の高さが裏目に出る可能性もあります。
要するに、柔軟性に欠けてしまうことがあるということ。
全てにおいて完璧な準備をした結果、予定変更を迫られたときに対応できないかもしれないのです。
もっと言えば、常に完璧を目指していると、人手や時間といったリソースをどれだけ投入しても賄えない量になった時、完璧を崩して対応しなければならない局面もある訳で。
そんな状況に上手く対応するには、「まぁいっか。」という余白をもって取り組む位が丁度良いのかもしれません。
協調性(共感性)
5つ目の性格因子は、協調性(共感性)です。
学校のような集団組織では、特に協調性の高さがもてはやされる傾向がありますが、やはり、協調性が高い方が、
人間関係や組織内においてより良い関係を築くことができる
と、分かっています。
みなさんのイメージ通り、協調性が高い人は、攻撃性が低く協力的で、他者に対して偏見をもつことなく肯定的に受け止める傾向にあります。
こう見ると、集団で生活する上で、非常に重要な性格であることが伺えますよね。
人間の幸福度が人間関係に左右されることを考えると、ぜひとも高い協調性を身に付けておきたいところ。
しかし、協調性が高いことで失うものもあるのです。
協調性のデメリット
学校で協調性を求められてきた人にとっては、「デメリットなんて?」と思われるかもしれませんが、まさに、「他者の考えを優先してしまう」ということこそデメリットなのです。
協調性が高い人は、他者の気持ちにも寄り添おうとするでしょう。
人間関係のバランスを取るスキルも秀でているかもしれません。
しかし、他者との衝突を上手に避けるがあまり、「他者の意見と自分の意見が食い違っている状況で譲ってしまう」なんて選択をしてしまうかもしれません。
未来に目を向けてみると、「協調性の高さは社会的成功にはつながらない」なんて結果も出ていますからね。
もちろん、何が何でも自分の意見を通すというのはやりすぎでしょう。
ただ、「これがいい!!」と思った自分の意見が他者と食い違ったところで、そこから話し合い、最善の選択を探っていけば良いのであり、自分を殺して相手に合わせ続けるという発揮の仕方は見直す必要があるみたい。
どのような出来事でも、「自分がやりたい!!」と思っているか「他者に合わせて参加している」とでは、幸福度において差が出てきますからね。
人間関係においても全ての人と仲良くやっていくというよりも、協力することで大きな力を発揮できるような関係性の方が良いでしょう。
お互いに意見を交わしながらより良く高めていくことができるよう協調性を発揮するのが良さそうです。
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